チームビルディングはアンラーニング
私自身が第4期を受講した「仲山&長尾チームビルディングプログラム@オンライン(TBP@Online)」の第5期に現在弊社の社員が参加しています。チームビルディングを社内に根づかせようと試行錯誤中です。さて、チームビルディングとはアンラーニングではないかと最近思えてきたので、今日はそのことを書きたいと思います。思いつき的な話を繋げた乱文ですが、お付き合いください。
アンデシュ・ハンセン著「ストレス脳」によると人間の脳は狩猟採集時代の行動様式の影響を未だに大きく受けているようです。狩猟採集時代の行動様式というと比較的小規模の集団で共同生活を行い、組織も比較的フラットで流動的だと言われています。これは私の推論も入っていますが、狩猟採集社会は農耕社会と違って強力なリーダーが強権的に支配するということはなく、皆が心理的安全性を持ちながら、個々の活動ではかなり臨機応変に個人が判断したり、連携したりしていたのではないでしょうか。例えば複数人でマンモスを狩りに行くとすると、予め決められた手順に従って動くというより、仲間や獲物の様子を観察しながら予測力を働かせて臨機応変に動くことで、マンモスを隘路に追い込み捕獲していたと考えられます。リーダーはいたかもしれませんが、農耕社会や封建社会の王様のような権力者ではないはずです。
ところが人類が農耕生活を開始すると、収穫や灌漑など大規模な事業が生まれ、チームプレイというよりはガチガチの縦社会による支配が社会の主流になっていきました。現代の企業でもその傾向は強く、内部統制とか職務権限とか、およそチームプレイとは相容れない組織の論理がはびこっています。しかし、現代のように変化のスピードが早く、リーダーが答えを知らない状況が多い時代には、この官僚型組織では不自由が多く、十分なパフォーマンスが上げられません。チームビルディングというのは、農耕社会以降に人類が身につけた官僚型組織をアンラーニングしていくプロセスのように思います。
この考えでいくとチームプレイというのは、体育会系風土や官僚型組織の不自由さを取り除いて、各人が心理的安全性を持って自由に発言したり行動したりできるようになれば、チームプレイは勝手に生まれてくるものということになります。「チームプレイだからこうしなければならない」という決まり事を持ち出すのは愚策で、混沌にまみれても干渉せずに自由にやってもらうことが一番です。リーダーは、優秀で勉強熱心で指導好きだと上手くいかなくて、むしろ愚鈍なほうが上手くいきます。実際には愚鈍ではなく、「愚鈍に見える優秀な人」というのが理想です。「優秀に見える愚鈍なリーダー」というのが最悪ですが、世の中そういうリーダーが多いです。長尾彰さんのnoteにまとめられていますので、参考にどうぞ。
愚鈍を装ったり、何も口出しをしないというのは、実はとても難しいことです。何もしなくて悪い結果が出ても、全力で干渉して悪い結果が出ても、最終的に結果に対して責任をとるのはリーダーなので、だったらせめて「頑張った感」を見せたほうが良いと思ってしまうかもしれません。しかも口出しをすると短期的・部分的には良くなることのほうが多いです。普通の組織だとリーダーに選ばれる人は相対的に経験が豊富で、スキルも上位の人が多いので、そういう人がメンバーに指導という名のもとに干渉することで、個別のケースでは良い結果が生まれるのが普通です。
ただ、干渉(指導)を続けるとどうなるでしょうか?メンバーが自分で考えなくなりますよね。メンバーは「どうせ自分の意見を言っても通らないだろう。だってあの人(リーダー)は自分が一番優秀だと思ってるから」と考えるかもしれません。余計なことを言わないでおこう、言われたとおりにしよう、という空気が大勢を占めると心理的安全性も下がります。そうこうするうちにリーダーの器を超えるような難題が持ち上がったり、状況が変化したりします。その時にはメンバーの力が必要になるのですが、今まで干渉され続けて主体性がなくなってしまったチームではどうにも対処ができなくなります。その結果パフォーマンスが上がらなくなるとリーダーはメンバーのせいにしがちです。「あいつら主体性がないんだよな」とか言っちゃいます。メンバーからしたら冗談もほどほどにしてくれって感じですよね。というわけで「優秀っぽいリーダー」が頻繁に介入する組織は短期的には上手く行くことが多いですが、長期的には息詰まることが多いと思います。
こういうチームは、狩猟採集時代には淘汰されてきたんだと思います。獲物がとれなくて飢えて死んで子孫を残せなかったはずです。ビジネスの世界でもたぶん淘汰されます。淘汰されないためには、今までのリーダー像や組織論をアンラーニングすることが大事なんじゃないかと思っています。時には自分が正解っぽいものを知っているのに、あえて口出ししないことも必要になってきます。「ここで介入すれば失敗を防げる」と思える場面でもあえて失敗するのを見守ることも出てくるかもしれません。(大局的に見たうえでの適切なタイミングでの適切な介入というのも必要ではありますが、その話は複雑なのでとりあえず触れません)実際にアンラーニングしたり、介入しないようにするのは簡単ではないです。でも全国大会で優勝したりするスポーツチームって大体そうじゃないかと思うのです。マイクロマネジメントするリーダーがいるチームは地方大会の準決勝とか止まりのイメージです。
チームビルディングを取り入れて成功した事例としてヤッホーブルーイングさんが取り上げられることが多いですが、ヤッホーさんも一朝一夕で成果が上がったわけではないようです。弊社もたぶん浸透するまで10年以上はかかるかなと思いながら取り組んでいます。何より社長である私自身が「優秀っぽい愚鈍なリーダー」からまだ脱却できてないです。自分を変えるだけでも数年かかるかもしれません。製造場をギラギラした目つきでウロウロしながら、あちこちに首をつっこむ社長じゃなくて、社員には「愚鈍だなあ」と思われながらも、会社の方向性がずれないように水面下でバタバタしてる社長像を目指したいものです。
なお、狩猟採集時代とチームビルディングに関しては仲山さんが面白い切り口で語られていますので、そちらもご参考ください。